デジタル化が加速する現代において政府機関もその流れに追随し、様々なテクノロジーを導入しています。
日本では、行政のデジタル化を推進する司令塔としてデジタル庁が設立され、その中核となるシステムにAmazon Web Services(AWS)が採用されました。
しかし、このAWS導入に対しては、様々な陰謀論が囁かれています。
デジタル庁とAWSの関係
デジタル庁は、行政手続きのオンライン化、データ利活用による国民へのサービス向上、そしてデジタル社会の基盤づくりを目的として、2021年9月に設立されました。
その業務を支えるシステム基盤として採用されたのが、Amazonが提供するクラウドサービスであるAWSです。
デジタル庁はAWSとの基本契約を2022年10月に締結しました。 デジタル庁は、政府共通のクラウドサービス利用環境を提供しており、AWSはその中核的な役割を担っています。
2024年3月末時点の進捗状況を確認した結果、大きな遅延はなく順調な開発進捗となっていることが確認されました。 また、2024年7月5日に公表された、ガバメントクラウドの対象クラウドサービスについて、技術要件の利用状況を調査した調査結果によると、AWSにおける利用状況の結果についても公表されています。
デジタル庁がAWSを導入する理由
デジタル庁がAWSを導入した主な理由は、以下の点が挙げられます。
- 迅速性と柔軟性
クラウドサービスであるAWSは、必要な時に必要なだけリソースを利用できるため、システム構築やサービス提供を迅速かつ柔軟に行うことができます。 - セキュリティ: AWSは、高いセキュリティ基準を満たしており、政府機関のシステムに必要な安全性を確保することができます。
- コスト効率: AWSは、従量課金制を採用しているため、初期費用を抑え、運用コストも最適化することができます。 クラウド利用の適正化では、本番稼働後に利用率を監視し、必要に応じてサイジングの見直しを実施することで、クラウド利用料の適正化を図っています。
- スケーラビリティ: AWSは、必要に応じてシステムの規模を容易に拡大・縮小できるため、将来的な需要の変化にも柔軟に対応できます。
デジタル庁はこれらの利点を活かすことで、国民にとって利便性の高いサービスをいち早く提供し、改善していくことを目指しています。
例えば、AWSを利用した神戸市での先行事業の取り組みでは、行政手続きをスマートフォンで完結できるSaaSサービス「Graffer スマート申請」と連携し、煩雑な手続きの利便性を上げる試みをしています。
また、最新のクラウド技術を最大限に活用することで、政府として共通に提供できる環境を構築し、政府や地方自治体のアプリケーション開発を現代的なものにしていくことを最大限支援しています。
しかし、政府が国産クラウドにダメを出したことで、民間企業はどうすれば良いのかという議論も生まれています。 国産のクラウドサービスを育成し、技術的な自立性を確保することとAWSのような実績のあるグローバルなクラウドサービスの利便性やコスト効率性を享受することの間には難しいバランスが存在します。
デジタル庁のAWS導入に関する陰謀論
デジタル庁のAWS導入に対しては、以下のような陰謀論が囁かれています。
1. 情報漏洩と国家安全保障の懸念
陰謀論的な主張
国民の重要な個人情報や行政データがアメリカ企業であるAmazonのサーバーに保管されることで、アメリカ政府に情報が漏洩する可能性がある。
日本の安全保障が脅かされるといった主張があります。
デジタル庁の見解
AWSは政府情報システムのためのセキュリティ評価制度であるISMAP(イスマップ)に登録されており、不正アクセス防止やデータ暗号化などにおいて高度な情報セキュリティが確保されています。
また、データセンターは日本国内にあり、紛争時の管轄裁判所も日本であることなどが契約で担保されているため問題ないと判断しています。
補足
重要な情報を取り扱う以上、情報漏洩のリスクはゼロではありません。
しかし、AWSは世界中の政府機関や企業で利用されており、高度なセキュリティ対策が講じられています。
また、データセンターの所在地や管轄裁判所などを契約で明確にすることは、リスクを低減する上で重要な措置と言えます。
2. 日本企業排除の疑惑
陰謀論的な主張
日本企業にも優れたクラウドサービスがあるにもかかわらず、デジタル庁がAWSを選定したのは、裏で何らかの力が働いたのではないかという憶測があります。
デジタル庁の見解
AWSはISMAPに登録されていることに加え、最新技術やグローバルな実績、コスト効率などを総合的に評価した結果、選定に至ったとしています。
応札した日本企業が何社あったかは明らかにされていません。
補足
入札経緯や選定理由の詳細が公開されていないため、憶測を呼ぶ余地があることは否定できません。
しかし、政府調達においては、技術力、実績、コストなどが総合的に考慮されるのが一般的であり、必ずしも日本企業が優先されるわけではありません。
3. 外国企業への依存とデータ主権
懸念
行政データを外国企業に依存することによるデータ主権の侵害や、将来的な価格高騰などのリスクを懸念する声があります。
デジタル庁の見解
クラウドサービスの利用は、システムの柔軟性やコスト効率の向上に繋がり行政サービスの向上に資すると考えています。
また、複数事業者からのサービス利用を想定しており、特定の企業への過度な依存を避ける方針です。
補足
クラウドサービスの利用は、データ主権やベンダーロックインのリスクを考慮する必要があります。
デジタル庁が複数事業者からのサービス利用を想定していることは、これらのリスクを軽減する上で有効な手段と言えます。
陰謀論の信憑性
これらの陰謀論について、現時点では明確な根拠や証拠は示されていません。デジタル庁は、AWSの導入にあたり、セキュリティやデータ保護に関する厳格な基準を設けており、情報漏洩のリスクを最小限に抑える対策を講じていると主張しています。
例えば、クラウドサービスを提供する事業者は、ISO/IEC27001またはそれに基づく認証を取得していること、およびISO/IEC27018もしくはそれに基づく認証を取得していること、または同等の取り扱いを行うことが求められています。
また、AWSは世界中の政府機関で利用されており、その安全性と信頼性は高く評価されています。
陰謀論の影響
陰謀論は、人々の不安や不信感を煽り、社会の混乱を招く可能性があります。
デジタル庁のAWS導入に関する陰謀論も、デジタル化への抵抗感を強めたり、政府への不信感を増幅させたりする可能性があります。
陰謀論への対策
陰謀論への対策としては、以下のようなことが考えられます。
- 正確な情報の提供: 政府は、AWS導入の目的やメリット、セキュリティ対策などについて、国民にわかりやすく説明する必要があります。
- ファクトチェック: 陰謀論で主張されている内容について、ファクトチェックを行い、誤った情報を訂正する必要があります。
- メディアリテラシーの向上: 国民一人ひとりが情報を見極める力を養い、陰謀論に惑わされないようにすることが重要です。
結論
デジタル庁のAWS導入は、日本のデジタル化を加速させるための重要な取り組みです。一方で、外国企業への依存や情報漏洩のリスクなど、懸念される点も存在します。陰謀論に惑わされることなく、正確な情報に基づいて、メリットとデメリット、そして潜在的なリスクを冷静に分析し、議論を進めることが重要です。デジタル庁には、国民の声に耳を傾け、透明性の高い情報公開と説明責任を果たすことで、AWS導入に対する理解と信頼を得ることが求められます。
付録: デジタル庁のガバメントクラウド
デジタル庁は、政府機関のシステムをクラウド化する「ガバメントクラウド」政策を推進しています。ガバメントクラウドは、以下のクラウドサービスを基盤としており、各省庁や地方自治体は、これらのサービスを利用してシステムを構築・運用することができます。
Cloud Service Provider | Adoption Date |
---|---|
Amazon Web Services(AWS) | 2022年10月決定 |
Google Cloud | 2022年10月決定 |
Microsoft Azure | 2022年10月決定 |
Oracle Cloud Infrastructure | 2022年10月決定 |
さくらのクラウド | 2023年11月決定(※条件付き) |
ガバメントクラウドの目的は、行政サービスの効率化、セキュリティ強化、コスト削減などを実現することです。
デジタル庁は、ガバメントクラウドの利用ガイドラインやセキュリティ基準などを策定し、安全かつ効率的なクラウド利用を促進しています。
デジタル改革基本方針では、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を掲げており、デジタル庁はこの方針に基づき、ガバメントクラウドの整備を進めています。
また、ガバメントクラウドへのリフト支援として、2024年上期は20団体の環境をフロントSEに払い出し済みで、同年下期には約100団体のリフト作業を予定しています。
さらに、2025年度には約320団体のリフト作業を計画しており、自治体庁舎とガバメントクラウド間を専用の閉域網へ接続する「個別回線接続」の敷設を含めた支援も行っています。
デジタル庁はゼロトラストアーキテクチャ適用方針を策定し、属性ベースアクセス制御などの技術レポートを公開するなど、セキュリティ強化にも力を入れています。
ガバメントクラウドは、日本のデジタル化を推進する上で重要な役割を担っており、今後の発展が期待されます。
総括
デジタル庁によるAWS導入は、情報セキュリティ、日本企業排除、データ主権など様々な観点から議論を呼んでいます。
一部には根拠不明な憶測や陰謀論と捉えられるものもありますが、重要なのは客観的な情報に基づいて議論し、リスクとメリットを適切に評価することです。
デジタル庁は、AWSのセキュリティや契約条件について説明を行っていますが、情報公開の透明性を高め、国民の理解を得る努力が求められます。
また、今後の運用においては、情報セキュリティ対策の徹底やデータ主権の確保に最大限配慮する必要があります。
この情報が、AWS導入に関する議論を理解する上で役立つことを願っています。
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